大方の予想通り、福田康夫氏が自民党の総裁に選ばれて、9月12日の安倍前首相の突然の辞意表明で引き起こされたリーダーシップの危機に一応のピリオドを打った。今のところ福田首相は日本の政治に安定をもたらすと考えられているが、その予想が正しいかどうかはこれからの数ヶ月で明らかになろう。
福田首相はすでに自民党と内閣のポストを決定したが、その顔ぶれを見ると、自民党にとって決定的に重要な次の衆院選を控えて、党内のすべての力を結集しようという意図がよく表れている。特に米国の立場から興味深い人事は、高村氏を外務大臣に横滑りさせて、その代わりに石破氏を防衛大臣に据えたことで、この2人ともそれぞれのポストの経験者で、主張も明確な実力者である。
福田首相は最初からいくつかの難しい課題を背負っているが、彼自身すでに2つの問題をこの臨時国会で取り上げると明言している。一つは、新しい年金改革法案であり、もう一つは、対テロ活動支援法案である。その両方とも、民主党との対決が避けられない。ただし、福田氏は小沢民主党党首とはかなりスタイルを異にしており、自民党の中でも中庸で調整型とも言えるタイプで、国内政策でも外交政策でもその特徴を出していくであろう。特に日本のアジアでの役割を重視し、中国との関係改善を望むグループの支持を受けているのが強みであるが、他方北朝鮮問題の解決には手こずる可能性が高い。
いずれにしても対テロ活動支援法の扱いが、福田首相がどう民主党を扱うかの最初で最大の試練である。現在、新法を提出する方向を探っているようであるが、福田氏は国民に対してなぜ日本が対テロ活動支援を続けるべきかを十分説明するとともに、対テロ作戦についての情報の扱いについて再検討する必要があろう。民主党の情報公開の要求と米国側の情報管理の希望との折り合いをどこでつけるかがここでの課題といえる。
野党が参議院で多数を占めるという国会のねじれ現象に直面して、自民党は福田首相に超党派で政策を推進する能力の発揮を期待している。一方民主党は自分たちのほうが日本をリードするにふさわしいことを示そうと全力を尽くすであろう。福田首相は、年金問題では民主党の妥協と協力を得る可能性が高い。なぜなら国民はこの問題がこれ以上政治の手段となり解決が長引くことを拒否するだろうからである。しかし対テロ活動支援法については、民主党があくまで自民党の提案を拒否すると考えられる。その点で、民主党は自民党との政策の違いを打ち出す一方で政権担当能力があることも示さなければならないという微妙な立場に置かれる。このままでは民主党の主張が通るかもしれないが、それが民主党自身のためになるかどうかは別問題であろう。
以上のように、日本の政策形成過程の状況は変わらざるをえない。これから色々なアイデアが国会で議論されるであろうが、その際の問題は、日本国民が誰を信頼して採用されたアイデアを実行させるかということではないだろうか。いずれにしても今後の国会の成り行きに注目したい。
英語の原文:
"Can Fukuda Yasuo Save the LDP?"
http://www.glocom.org/debates/20070927_smith_fukuda/