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注目記事(2007/10/9)

Opinions:
 
「日本の都市再活性化の成功方程式」
 細野助博 (中央大学教授)
  
  以前は地方経済の中心として活気のあった地方都市の中央市街地が、今や人気のない寂しい場所になってしまった。これは少子高齢化のよる人口減少の結果よりも、むしろ郊外の高速道路沿いに巨大なショッピングセンターのようなビジネスが急拡大していることの直接的影響であるといえる。中心市街地の衰退が問題なのは、雇用問題、自動車への依存、都市インフラや環境の悪化といった社会的問題を生むためである。
  この問題を解決するためにこれまで様々な試みがなされてきたが、どれも効果が上がっていない。最近では政府が「まちづくり三法」によって、郊外のショッピングセンターの規模などを規制しようとしているが、それが中心市街地の再活性化につながるかどうかは疑問といわざるをえない。むしろきちんとしたロジックと体系的に整理された前向きのアプローチを取るべきである。実際に、都市の現状についてのデータや因果関係を詳しく分析した結果、以下の中心市街地再活性化のための5つの成功方程式が得られた。
  成功方程式1:「ユニークな地方ブランドによる主張」。地域ブランドは今や公式な知的財産権とみなされるので、それを有効に活用すべきである。また商品だけでなく、建物や歴史遺産やイメージなどもブランドの対象になることに留意して、地域が「オンリーワン」の重要性をもつことを強調する手段として利用すべきである。またまちつくりにとって有効なブランド戦略を展開するには、住民の参加意識と人材の育成が必要不可欠である。
  成功方程式2:「選択と集中によるパワーアップ」。地方都市で少しずつ何でも揃えようとすることは誤りで、特定分野への集中が重要である。例えば映像メディアや手作り文化などに特化して情報発信する必要がある。外に対して存在感を示すことが、都市再活性化の第一歩であり、そのためには様々な可能性のなかから、もっとも有効な分野を選択して、いわゆる「ソフトパワー」を強化することにより外部からの注目と資源を集めるべきであろう。
  成功方程式3:「人づくりなくしてまちづくりなし」。都市にとって卓越したリーダーが重要であるが、リーダーというのはある日突然出現するわけではなく、日々の活動の中から育っていくものである。ただし、ここで必要なリーダーとは、革新的アイデアを導入し実施するような「出る杭」であることがポイントで、そのためには、常に自分たちの行動から学ぶとともに、外からも学ぶ努力を重ねることが大切である。
  成功方程式4:「連携する組織のネットワーク化」。リーダーが有効に活動するためには、組織的なバックが必要で、そのために都市再活性化のための産官学の提携に加えて、地元のNPOやボランティア組織のネットワークが重要な役割を果たす。実際にそのような連携の成功例が、多摩地域などでみられるが、今後はさらにコミュニティビジネスなどが育つようなネットワーク作りが求められよう。
  成功方程式5:「情報戦略で地域ポテンシャル向上」。ITの利用は商店街振興や行政の告知などに限らず、もっと地域住民間のコミュニケーションを促進して地域全体のポテンシャルを高めるようにすべきである。そのような情報戦略で地域にある様々な資源を発掘・統合して、まちづくりの価値連鎖(バリューチェーン)を実現することができる。以上の成功方程式を考慮に入れ、さらに外部とのネットワークを確立すれば、最新の情報技術を活用して都市を再活性化することが可能となるであろう。

英語の原文: "Success Formulas For Community Revitalization in Japan"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20071009_hosono_success/
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