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注目記事(2007/11/7)

Opinions:
 
「小沢一郎の誤りと今後の政局への影響」
 飯沼良祐 (オリエンタル・エコノミスト)
  
  今回の民主党をめぐる一連の出来事は「小沢氏の病気」、つまり小沢氏のパーソナリティーの欠陥がまた出てしまったといえる。 物事の本質を見抜いた枠組みを構想してそれを推進し、いいところまで持っていく。しかし、彼の戦略に賛成して、変革への推進力を一緒に担っていく人たちの思いに気持ちが届かず、彼の目からは「こんなことではだめだ」との思いを抑えきれずに物事を壊してしまう。過去を見れば、その繰り返しである。細川内閣を作り、小選挙区制を導入し、日本の政治の制度的枠組みの革新を成し遂げながら、その細川内閣を壊し、羽田内閣を壊し、新進党を壊した。今度は民主党の安全保障問題での内部対立にいっぺんに嫌気がさしてしまったのである。
  それでも、党内は経済・社会政策については、小沢流を呑んできた。基礎年金を税金負担化するが消費税は上げない。岡田・前原代表時代には3%引き上げるといって、それなりに世論の理解も得ていたが、選挙効果を狙った小沢氏の「増税なし」をともかくも承認してきた。農業の戸別所得保障。これも、都市・地方の格差是正と地方コミュニティ保存のため、そして小沢氏が身を粉にして動き回った地方選挙区での勝利にためには必要な政策だろうと認めた。ここまでは小沢氏も不満は持たなかった。
  ところが、テロ対策への対案作りに党内がまとまらない。これは今の日本の安全保障意識の現状では仕方ないところである。インド洋での補給は、憲法と海外での自衛隊の展開の論理的つじつまをいちばん合わせやすい選択として、民主党も六年前には賛成してとられた選択である。小沢氏が反対を言い出すまでは、今回の特措法延長にも民主党は反対ではなかった。
  その民主党を、小沢氏の持論の、国連の明確な決議があれば戦闘を伴う平和維持活動にも参加する、というところへいっぺんにもっていこうとしたわけで、それが簡単にまとまるはずがなかった。もちろん、小沢氏の考え方それ自体は一つの立派な方向で、アジア太平洋の平和維持と日本の防衛という点ではアメリカと同盟関係を維持しながら、往々にして誤るアメリカの軍事力行使にどうバッファーを置くかというのが日本の安全保障戦略の基本である。しかし、それで今、民主党が一気にまとまれるとは思えない。一から十まで、自分の思い通りにやりたいという小沢病が、選挙の勝利を経てまたまたぶり返してしまったのである。
  政権が変わるということが大事。官僚におんぶに抱っこで政策を展開してきた自民党には、本当の改革ができるわけはない。民主党ならばそれをやって、無駄な支出をなくして、増税せずとも社会保障制度を安定させられる。小沢氏が発していたメッセージは、自民党の政策が行き詰まり状況にあっただけに、人々をひきつける魅力を持っていた。 それを、当のご本人が、「権力が変わる」という一番肝心なところを捨てた大連立に走ろうとしてしまった。民主党の発していた大きなメッセージに、党首自らが懐疑心を表明したわけだから、打撃は大きい。
  ではこれで日本の政治の大きな流れが変わるのか。 私は基本的には、今回の出来事は一つのエピソードにとどまり、競争する二つの政党を持つという、ようやく見えてきた可能性に国民はなお希望をつなぎ続けると思う。今回のハプニングがあまりにも小沢氏の性格のなさしめたものであるが故に。しかし流れの勢いは弱まったことは否定できない。民主党が福田首相を追い込んで来年の4月には行われると考えた解散総選挙はもう少し後にずれ込むであろう。

英語の原文: "Ozawa's Mistake and Its Effect on Japanese Politics"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20071107_iinuma_ozawa/
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