日本経済の活性化のための一つの重要な柱は、日本に対する海外投資を促進することであり、それは福田首相の施政方針演説でも強調された点である。そのためには、日本が外国企業の参入を歓迎していることを説得的に示す必要がある。
空港については、国土交通省が、成田国際空港会社と羽田の日本空港ビルディングに関する外国資本の保有合計を3分の1未満に抑える規制を計画している。これに対して、一部の閣僚が反対しており、経済財政諮問委員会でも否定的な意見が多い。
空港民営化では、「安全保障上の懸念」と「独占による悪影響の懸念」とを区別しなければならない。まず、安全保障に関しては、問題は会社の国籍ではなく、日本の国益を損なうような所有者の支配を避けることなので、一社で持てる株の上限を規制する大口規制をかけることが望ましい。外国企業に差別的な規制を課してまで民営化を急ぐ必要はなく、それよりむしろ国が所有管理したままのほうがまだましである。
一方、空港施設が独占的になりがちな点については、過小になる傾向を持つ設備投資を正しい方向に誘導するような税制や補助金を採用し、またサービスの価格が不当に高くならないよう上限価格規制を課することは必要であろう。しかし、それは外資規制の根拠にはならない。
もう一つの重要な視点は、成田と羽田の違いである。成田国際空港会社の場合は、空港のすべての施設を管理運営しており、国がまだすべての株を保有している。したがって、どのような規制が必要かは早くて1年以上先の予定である株式上場までに考えればよく、拙速は禁物である。
他方、羽田の場合、日本空港ビルディングはもともと民間会社であるが、滑走路など離着陸に必要な施設は国が保有するというアレンジになっている。そこで、空港ビルの20%弱を豪マッコーリーが取得し、外資合計が25%を超えたからといって、合計3分の1という外資規制を導入するのは、「後出しじゃんけん」と批判される可能性が高い。また日本が外資アレルギーをもっているという外国人投資家の疑念を深めることにもなろう。
いずれにしても、国益がかかっている空港外資規制については慎重に検討すべきで、歴史的に成田国際空港会社へのOBの天下りが多い国土交通省などの省益確保が優先するようなことがあってはならない。
結論として、空港外資規制は、安全保障上や独占の危惧を払拭するために必要でも十分でもない。海外で「後出しじゃんけん」とか、「新たな外資規制の導入」とかいった悪い印象を与えることは、日本のオープンな資本市場のイメージを大きく損ねるだけであろう。
英語の原文:
"A Case Against Regulating Foreign Investment in Airports"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20080225_ito_case/