日本人は、中国が30年ほど前にケ小平の指導のもとで改革開放政策を始めたとき、それがどの程度進むか懐疑的であったし、今日でも依然として中国は混沌としており、将来はもっと混乱した状況に陥ると思い込んでいる向きがある。しかし、中国は確かにこれから民主化と開かれた社会への長い道のりをたどるべきであるとしても、日本は中国がこれまで成し遂げてきた驚くほどの変革から多くを学ばなければならない。
実際、ある西側の外交官は、日中両国に駐在した経験で、中国では急激な変化が国の隅々にまで行き渡りつつあるのに対し、日本では変化への行動が遅々として進まないことに失望したという。それは単に国内だけでなく、外に対する政策でも、中国は海外からの資金や投資を積極的に導入しているのに対して、日本は外資導入に消極的で、国内産業の利益を守ることに腐心している。
憂慮すべきは、このグローバル化の時代にあって、日本がまだ多くの面で世界から孤立しており、さらに内向きの排外主義という一種の「鎖国」のメンタリティに陥っていることである。実際に、長年にわたり、海外からの直接投資を拒絶してきた日本では、他の先進国と比べて外国企業の存在が極端に少ない。
ようやく最近になって、経済の低迷を克服するための方策として、日本政府が海外からの直接投資を呼び込もうと努力し始めた。しかし、日本企業は次々と外国資本による乗っ取りを防ぐために法的な障壁をつくり、官僚主導の体制や時代遅れの司法判断がそれを助けている。最近問題になった空港外資規制論もこの一例である。さらに税制のあり方や株式市場のルールを始めとする規制などが排外的であり、また英語が出来て国際的なビジネスに向いた人材が不足していることも、外国の資本や投資に不利な条件となっている。
1986年に当時の中曽根首相のもとで、有名な「前川リポート」がまとめられた。それは輸出に頼るのではなく、内需拡大、輸入拡大、規制緩和による経済政策への変革を簡潔に提案したものであった。この報告書は、20年以上経た現在も、内需拡大と規制緩和を説いた点において、その重要性は薄れることはない。
今日、現代版「前川リポート」をまとめる話が浮上しているが、日本の国に内在するともいえる過剰な防衛意識を考えると、その改善にはよほど強力な政治のリーダーシップが必要である。19世紀の黒船来航や第二次大戦での敗戦というトラウマのような節目の体験を経てきた日本にとって、非常に根深い内向き傾向と戦うことが絶えまざる課題であるといえよう。
英語の原文:
"Xenophobia Will Get Japan Nowhere in Today's Global Age"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20080303_ishizuka_xeno/