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注目記事(2008/3/24)

Opinion:
 
「中毒財への課税の強化を」
 大竹文雄 (大阪大学教授)
  
  最近のアンケート調査によると、タバコを吸う人の多くは、ギャンブルも酒もやるという結果が出ている。それだけではなく、タバコを吸う人は吸わない人よりも不幸で、その不幸の程度を金額に換算すると、年収約200万円の減少に対応するという。タバコやギャンブルの常習者は、住宅ローン以外の負債を抱えている比率も高い。
  タバコ、ギャンブル、酒というのは、どれも依存症になりやすいという点で共通しており、このような財は「中毒財」と呼ばれる。こうした財は、それを過去により多く消費していればそれだけ今消費することの満足度が大きくなるという特徴がある。したがって、何らかのきっかけでタバコやギャンブルを始めてしまうと、そこから抜け出すことは至難の業となる。不幸になることが分かっているのに、中毒財の悪循環から抜け出せないのが依存症の最大の不幸である。こうした依存症を防ぐ方法は二つある。
  一つは、中毒財の価格を、税を課すことで引き上げること。もう一つは、中毒財の販売を禁止してしまうことである。税を課すことのメリットは、中毒財の購入を減らすと同時に、税収をもたらしてくれることで、アメリカやカナダでは、タバコ売上税の増税が喫煙を減らして、人々の幸福度を引き上げたという研究がある。日本でもタバコ価格が上がると喫煙量が減少するという研究結果が出ている。また世界保健機関(WHO)が発表したタバコ規制に関する報告書でも、喫煙による健康被害を防ぐ方法の一つとしてタバコ価格の引き上げが有効と指摘されている。
  中毒財の販売を禁止してしまうことのメリットは、中毒財を消費する機会そのものをなくすことができる点である。米国の研究で、カジノが設立された地域でギャンブル依存症が原因と考えられる犯罪発生が増えたことが示されているが、逆に言えば、カジノを規制すればそれだけ犯罪が減ることを意味する。
  もちろん、規制を守らせるための監視費用が高くつくという問題はある。しかし、少なくとも駅前に目立つパチンコ店を規制したり、パチンコのテレビCMを規制することは簡単である。同時にパチンコへの課税強化も一案であろう。最近、韓国や台湾でパチンコが法律で禁止されたそうである。タバコやギャンブルに対する課税や規制を強化することで人々が幸福になるのなら、日本でも真剣に検討すべきではないだろうか。

英語の原文: "A Case For Higher Taxes on Addictive Goods"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20080321_ohtake_addictive/
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