福井教授は英語の論文(以下のリンク参照)で、消費者庁や内閣人事庁といった新しい行政組織の創設や統合を検討する際の重要な視点として、まず求められている目的や役割を明確にした上で、必要な手法や組織のあり方を検討すべきであることを指摘する。
現在の縦割り行政のもとでは、矛盾や重複や法的な抜け穴が出てくるので、責任を明確にするという意味で統一した行政組織を作ることは意味があるが、しかし現在は中身よりも器の議論が先行しているきらいがある。
例えば消費者行政の場合、必要なのは消費者の正しい判断を支えるための情報の開示と提供なので、情報のレベルの一元化に留めるべきで、業界規制の権限まで与えると官の肥大化につながる懸念がある。また、公務員人事行政の一元化は、縦割り是正の意味はあるものの、過度な権限の集中を招く恐れが大きい。
さらにこれらの新たな庁は、各省庁からの出向者の寄り合い所帯になり、出身省庁の顔色ばかりうかがって十分力を発揮できない懸念もあるので、その成否は出身省庁のしがらみなく仕事をできる人がどれだけいるかに左右される。それを促進するためにも、新組織の公務員に対するインセンティブを、広く国民や社会のために仕事を遂行するようなシステムにすることが重要になる、と福井教授は主張する。
英語の原文:
"Cautions on New Unified Government Agencies"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20080411_fukui_caution/