石塚氏は英語の論文(以下のリンク参照)で、日本人が内向きになるにつれて、日本の声がますます海外で聞かれなくなっており、そのことについて日本人自身が不満をもつという悪循環にまず言及し、それに関連してNHKの経営委員長がNHK国際放送では「国益」をより明確に打ち出すべきと発言したことにメディア関係者や学者から厳しい批判が出されている問題を取り上げている。
ここで明確にする必要があるのは、NHKは政府が運営する組織ではなく、国会の監督下にある公共放送であり、「公共」という意味は商業的利害や政治的介入から独立であると理解すべきことである。そして何が「国益」かは外部からの圧力ではなく、全面的にジャーナリズム自体の基準で判断されるべきことである。ただし、そうはいっても誰がどのように「国益」を定義して判断するかは、特にNHKのような公共放送にとっては難しい問題といわざるを得ない。
しかしながら、NHKの国際放送が海外向けに日本の国益を明確に打ち出すべきという主張の背景には、日本の声が海外で聞かれなくなっていることに対する国民の不満があると解釈することもできる。そこで「国益」とは何かを議論する一方で、もっと日本の立場を、国内におけるさまざまな意見とともに、海外に発信することが重要である。そうすることが結局は日本の国益に資することになるであろう。
日本発の英語のメディアが少ないことが、グローバル化の進む世界の中で日本に不利に働いていることは明らかである。このような事態を変えるためには、政府からの圧力を受けがちなNHKに依存するのではなく、個人、企業、大学、非営利団体などメディアを含むさまざまなレベルの人や組織がそれぞれの立場から対外的な発信に努力すべきであり、また幅広いフォーラムを形成して、日本が長年抱えてきた国際発信の問題を解決すべきときにきているのではないかと石塚氏は述べている。
英語の原文:
"Can NHK Help Japan Speak its Mind to the World?"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20080502_ishizuka_nhk/