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注目記事(2008/5/20)

Opinion:
 
「日本と中国が取り組む新たなテーマ」
 シーラ・スミス (米外交問題評議会ジャパンフェロー、慶応義塾大学客員研究員)
  
  シーラ・スミス氏は英語の論文(以下のリンク参照)で、今回の日中首脳会談で議論された「戦略的互恵関係」の推進という日中の新たなテーマについて、それがこのところ悪化していた両国間の敵対意識を終息させ、将来の友好関係に新たな種を撒いたと述べている。主な合意内容は、毎年一方の首脳の他国訪問、気候変動や朝鮮半島の平和推進といった課題に対する協力などであるが、この新しい日中関係が期せずして胡国家主席の帰国直後に起こった四川大地震への対応によって試されることとなった。福田首相は直ちに中国国民へ哀悼の意を表わし、国際緊急援助隊を組織し、翌日には5億円の援助を決め、2日後に中国政府は、日本の国際緊急援助隊の受け入れを決定したのである。
  今回の日中首脳会談は、過去2年ほどの両国政府による関係改善の努力もあって、前向の共同声明の発表という結果となり、そこでは中国側がこれ以上日本の謝罪を求めることはなく、さらに戦後60余年にわたる日本の平和への貢献を認めている。ただし、東シナ海ガス田開発問題のような中国の国家主権とエネルギー政策にかかわる懸案では合意にいたらなかった。他方、今回の首脳会談の最大の成果は、気候変動に関する協力の基本合意であろう。中国が日本の「セクター別アプローチ」を有効な手段として評価する一方で、日本は中国と協力して、中国におけるCO2回収のための新技術応用の共同プロジェクトを進めることになった。
  日本と中国は外交においてお互いを重視することを約束したが、それは北東アジア諸国が歓迎するところであり、米国政府もアジアの二大国の敵対意識が和らいだことで安堵しているといえる。もっとも中国の台頭という長期的な課題は、日本にとっても米国にとっても取り組みが難しいことには変わりはない。
  日中のリーダーにとっての問題は、それぞれの国民に対して日中が運命共同体であることを納得させることであろう。「餃子事件」のような問題には依然として国民は神経質である。また、日本の保守派は福田首相が胡国家主席にソフトすぎると言い、右寄りのメディアは政府が「へつらい外交」に堕していると批判している。
  ここで米国は注意を払いながら、日中関係の改善を支援し奨励する役割を果たすことが重要である。特に日本が中国と合意した課題、たとえば貿易、食料、エネルギー、朝鮮半島などの問題の解決に当たる際に、日本政府とパートナーシップを組んで協力する方法を探るべきである。米国は日中の動きを察知しつつ、日本に対してアジア太平洋地域諸国と運命を共にするような将来を構築するために協力する旨のシグナルを送ることができるであろう。
  しかしながら今は、アジア地域の政治問題はさておいて、福田首相と同様に、米国も中国に対して哀悼の意を表わし、援助を申し出るべき時である。それは他意のない行為で、政治を超えた共同社会へのコミットメントの表明であり、それこそが北東アジアの将来を約束するものに他ならないと、シーラ・スミス氏は述べている。

英語の原文: "A New Agenda for Japan and China"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20080520_smith_agenda/
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