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注目記事(2008/6/16)

Opinion:
 
「次期米大統領と日米関係への影響」
 ウェストン・コニシ (米外交問題評議会、日立国際問題フェロー)
  
  ジョン・マケインとバラク・オバマ両氏の大統領選挙に向けての重点政策、特に日米関係を含むアジア政策を比べると以下のような違いがあるといえる。
  まず、マケイン陣営の外交問題のアドバイザーには、キッシンジャーやアーミテージといった大物が並んでおり、アジア問題については日本専門家を中心に少数のグループがアドバイザーとなっている。それに対して、オバマ陣営にはそれほど有名人はいないが、中国問題を中心とするアジア専門家のアドバイザーがかなり大きなグループを形成している。
  マケイン陣営が強調するアジア政策のメッセージは、第1に日本が米国にとってアジアで最も重要な同盟国であること、第2に自由貿易を支持していること、第3にオバマが主張しているイラクからの撤退はアジアでの米国の信頼を傷つけるであろうこと、第4に地球温暖化や環境問題に対する政策でオバマ候補の先手を打つことなどが指摘できる。
  他方、オバマ陣営は、第1に日本が米国にとってアジアで最も重要な同盟国であることを否定しないものの、第2の自由貿易の問題については国内の視点をより重視すべきという陣営内の声も強く、また第3のイラクとアジアとのリンクは強く否定されるであろう。さらに第4の環境問題については積極的な解決を目指すプランが間もなく出され、マケイン陣営との論争が期待される。
  これらに加えて注目すべきは、「民主主義リーグ」ないし「民主主義コンサート」と呼ばれるアイデアで、これは国連や他の国際機関が動けない場合にもグローバルな問題に対して民主主義国家が団結して当たるというもの。このアイデアはマケイン候補が選挙演説で強調しており、オバマ陣営でもこの考え方に賛同する向きも少なくないが、おそらく違いがあるとすれば、マケイン陣営では例えばアジアでは日米印豪のように民主主義以外の国を排除したグループ形成を考えるのに対して、オバマ陣営ではより多くの国と対立のないような包括的なスタンスを取る可能性が高いという点であろう。
  外交関係ではこれまでもっぱら中東問題が中心で、アジアは北朝鮮問題を除いてほとんど取り上げられておらず、日本はまったく触れられていない。もちろんこの状況は今後変化する可能性もあるが、いずれにしても日本に対する政策はどちらの候補が大統領になっても大きく変更されることはないであろう。しかし、「民主主義リーグ」ないし「民主主義コンサート」のビジョンは、米国の対日政策にも日本自身の外交政策にも大きく影響する可能性があるので、日本はそのビジョンに積極的にかかわり、そこでどれだけどのような役割が果たせるかを考える必要がある。
  最後に、日本のリーダーや政策当局者がこれまで米国の民主党側と十分な関係を築いてこられなかったといわれているが、もしそれが事実であるとすれば、オバマ陣営の若い世代のアドバイザーたちとの交流を考えるべきである。彼らは次の世代の米国の「アジア・ハンド」となることは間違いないので、日本政府は彼らと一緒に日米が将来直面するグローバルな問題に積極的に協力して対処するような関係を築くことが望まれるであろう。

英語の原文: "The Next U.S. Administration: Implications for U.S.-Japan Relations"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20080616_konishi_next/
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