石塚氏は英語の論文(以下のリンク参照)で、来年発足する「消費者庁」の創設は、支持率が危機的に低下した福田首相が主導して「生活重視」の路線を打ち出そうとするものであるが、マスコミも一般国民もはたしてこの新しい庁に何ができるか懐疑的であるという。なぜなら、関連省庁の官僚の抵抗により、消費者行政に関する法令の半数以下で、しかもあまり重要でないものだけが新しい庁に移管されるからである。これでは福田首相が、これまでの生産者重視の政策をどこまで消費者重視に転換できるか疑問視されるのは当然であろう。
このような改革を阻んでいるのは、抜きがたい自己保身の本能を持つ官僚による反対である。実際に官僚は必要な変革に抵抗するだけでなく、違法行為を犯したり、誤った政策を認めようとしないなど、むしろ害をもたらしている面が大きい。さらに困ったことに、そのような官僚の力が弱まる傾向が見られない。今最も差し迫った日本の課題は、官僚制の締め付けから解き放たれることといえるが、それを推進する最近の試みである公務員制度改革法が先日成立したものの、その実際の効果のほどは未知数である。
問題は、理論上日本の政府は英国流の「議院内閣制」をモデルとして、首相が閣僚を指名することで官僚を支配できることになっているが、実際は逆に官僚が各省庁を牛耳っており、閣僚は担当省庁の代弁者になっていることで、「官僚内閣制」ないし「日本合省国」と皮肉られることもある。
さらに事態を悪化させているのは、官僚が産業界やその他の利益団体と手を組んでおり、その長年の構造が消費者の保護をおろそかにしていることである。昔ならともかく今や生産者を優先する時代ではなく、消費者の側を考えるべき時代が到来しているにもかかわらずである。
このような状況において、日本の政治は沈滞し機能不全に陥っている。腰の定まらない福田政権は政権担当能力のない民主党と無益な対立に行き詰っている。政治が立ち向かうべきは政党間の争いではなく、官僚制に対する戦いである。この点は最近になるほど差し迫った課題となってきている。もし官僚制を打ち破る決意をもった政党が現れれば、必ずや国民の支持を得るであろうと石塚氏は述べている。
英語の原文:
"Straitjacket of Bureaucracy Japan's Own Worst Enemy"
http://www.glocom.org/opinions/essays/
20080707_ishizuka_straitjacket/