7月23日に日本外国特派員協会のランチョン会合で、経済同友会副代表の長谷川閑史氏(武田薬品工業取締役社長)がプレゼンを行い、経済同友会が最近発表したレポート「新・日本流経営の創造」の要旨を説明した。このレポートは同友会の企業経営委員会の委員長である長谷川氏が、メンバー経営者へのアンケート調査結果に基づいて取りまとめ、主に自ら執筆したものとのことである。
このレポートは、これまでの日本流経営の長所と短所を認識した上で、現代のビジネス環境の変化に対応して生産性と競争力を高めるために、その長所を維持しながら、日本の経営を改革する方向を打ち出すことを主要な目的としている。長谷川氏と他の同友会のリーダーが見るところ、日本流経営の長所には、長期的視野、全員一致による正確な実施、情報交換による関連会社も含めたビジネスの一体化、プロセスの革新や環境優先技術の開発能力などがある。またアンケート調査の結果では、この他、品質や安全性の重視、従業員の忠誠心、教育レベルとチームワーク精神の高さなどが強みとして挙げられている。
他方、短所としては、外国人の除外、契約ではなく信頼の重視、全員一致の意思決定、外国語能力の低さなどがあり、これらの弱点は、グローバル化、技術革新、人口・環境・資源問題が深刻化するビジネス環境の変化に対応できるよう是正していかなければならない。そのためにも、日本全体および特に日本のビジネスが今後直面する課題を考慮しつつ新しい日本流経営を確立する必要がある。
同友会のレポートでは、それらの課題として、(1)アジア地域および環境分野におけるリーダーシップの発揮、(2)グローバルおよび長期的な視点からの競争力の向上、および(3)グローバルな問題解決のための国際社会への貢献が指摘されている。このような課題に応えるために、日本のビジネスは、日本流経営の強みを維持増進しながら、欧米流経営のプラス面も取り入れる柔軟性を持つべきというのが結論である。
以上のような長谷川氏のプレゼンに続き、活発な質疑応答が行われ、外国人特派員がいくつかの重要な問題を提起した。例えば、日本流経営の長所とされるグループの協調性を維持することと、アメリカ流経営の特徴である個人主義的で革新的な側面を取り入れることとの間の矛盾をどうするか、また今回の同友会の提言が近い将来日本の経営を本当に望ましい方向に変えられるのかといった質問に対して、長谷川氏からの明確な答えは聞かれなかった。
英語の原文:
"Creating A New Style of Japanese Management: Keizai Doyukai's Report"
http://www.glocom.org/special_topics/activity_rep/
20080724_miyao_fccj/