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注目記事(2008/9/1)

Opinion:
 
「経済対策と原油・食料価格上昇」
  伊藤隆敏 (東京大学教授)
  
  伊藤氏は英語の論文(以下のリンク参照)において、日本の景気が悪化している原因は、原油価格や食料価格の高騰によるコスト上昇と消費減退であると主張する。原油・食料価格の高騰は、資源価格が他の価格に比べて上昇するという世界的な相対価格の変化を意味する。またそれは日本のような資源のない国から資源が豊富な国への「所得移転」を意味し、日本がこれまでよりも不利な状況に立たされることになる。
  経済政策としては、財政・金融政策で景気を刺激すればインフレが悪化し、逆にインフレ抑制のために引き締め政策をとれば、確実に景気は悪くなる。財政・金融政策は非常に難しい局面を迎えている。
  明らかに不適切な政策としては、賃金や年金に物価上昇分を補填することであり、それはインフレを悪化させるだけである。また相対価格の変化を歪めるような規制や価格連動型の補助金も不適切である。さらにコスト上昇を理由とした予算拡大も、コストベネフィット分析による基準で事業の採算が合わなくなることを意味する。
   経済対策として短期的効果は小さいが、中長期的に望ましい政策ははっきりしている。第一は、新しい相対価格への転換を促進する政策で、代替エネルギーの開発などの政策がある。第二は、食料や飼料の価格上昇の不利益を利益に転換させる政策で、「生産調整」の廃止、営農の大規模化やブランド力の強化を後押しする政策が考えられる。第三は、日本の強みを生かす成長戦略の促進で、家計部門や年金基金で蓄積した資産の活用や、日本が誇る人的資本が高い報酬を得られるような制度づくりが必要であろう。
   日本経済の構造転換を図りつつ、景気減退を最小限に抑え、しかもバラマキでない経済対策を実現することが重要であると伊藤氏は述べている。

英語の原文: "Economic Policy Measures in Response to Oil and Food Price Hikes"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20080901_ito_economic/
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