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注目記事(2008/9/8)

Opinion:
 
「労働力のニーズが導く『第三の開国』」
  石塚雅彦 (フォーリンプレスセンター評議員)
  
  石塚氏は英語の論文(以下のリンク参照)において、日本は国内の労働力が減少している中で、政府も国民も外国からの労働者の受け入れを躊躇しているが、国として存続していくためには、そのような態度を根本から変えるような「第三の開国」が必要であると述べている。
  今年8月上旬に200人のインドネシア人が看護師・介護福祉士候補生として来日した。インドネシア政府との経済連携協定による初めての受け入れである。これは一見すると外国人労働者受け入れに関する日本の姿勢の変化のように見えるが、同時にその是非をめぐる論争は日本人がこの問題について依然として躊躇していることを示している。人口が減少する日本において、その経済力を維持するには外国人労働者の受け入れが不可欠にもかかわらず、包括的な移民政策についての真剣な議論が欠如している。これは自分の国の将来の深刻な課題に直面することを避けるという日本人の優柔不断さの好例といえよう。
  実際、この移民問題の解決には、「第三の開国」ともいえる歴史的変化を必要とするであろう。第一の開国は18世紀半ばの黒船の来航であり、第二は第二次世界大戦の敗北である。
  昨年末時点で、日本の外国人は人口の1.7%の215万人ほどで、10年前に比べると50%増加している。そのうちかなりの数が外国人学生と外国人研修生であり、主に中小企業や農業部門などで極めて低い賃金で働いている。これは研修生という名を借りた発展途上国への援助の一形態ともいえる。
  このような現実に対して、経済連携協定によって受け入れられるインドネシア人(フィリピンとは現在交渉中)の看護師・介護福祉士候補生は特別扱いともいえるが、しかし実際は彼らには厳しい現実が待ち受けている。まず、普通の日本人と同様に、日本語での看護士や介護福祉士の国家試験が課せられ、3年以内に合格しなければ母国に返還される。また介護の分野は、労働条件が厳しく、低賃金のため、離職率が高く、高齢化によって急増する需要に対して慢性的な労働力不足となっている。したがって今回来日したインドネシア人は予想よりもかなり少なく、この程度の人数では日本に何のインパクトも与えられないであろう。
  これらの背景には、外国人労働者や移民の受け入れについて包括的な国家政策の完全な欠如がある。移民政策を含めた人口政策がなければ、日本の国としての存続そのものが危うくなるといえる。最近80人の自民党政治家のグループが、2050年までに日本を人口の10%を外国人が占める「多民族国家」にすることを前提とする積極的な移民政策を提案したが、これは国民が受け入れそうもなく、実現は難しいと思われる。その方向に進むためには、まず外国人労働者が国内で減少する日本人労働者の代わりをする安上がりの一時的な労働力という考え方を捨て去らなければならない。そして日本は社会的にも文化的にも生まれ変わって、外国人と一緒に生活し、外国人のために日本をより魅力のある場所にするという発想が必要であろう。それこそが歴史的に見た日本の「第三の開国」に他ならないと石塚氏は述べている。

英語の原文: "Foreign Labor Need Adds Up to Japan's 'Third Opening'"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20080908_ishizuka_foreign/
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