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注目記事(2008/10/14)

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「報告:新JICAの使命とアプローチ:緒方貞子理事長講演」
  情報発信機構 (宮尾尊弘国際大学情報発信機構長)
  
  10月1日に「新JICA」(独立行政法人・国際協力機構)がスタートした。それは旧JICAと国際協力銀行(JBIC)を一本化して、技術協力、円借款および無償援助を含む日本のODAの大部分を統合するためであるとされる。その新JICAの緒方貞子理事長が、10月2日の日本外国特派員協会におけるランチョン・スピーチで、この新組織の使命やアプローチについて講演を行った。以下がその講演の要旨である。
  よく知られているように、グローバリゼーションとは、地球温暖化、気候異変、食料危機、エネルギー危機などがグローバルな規模で相互に関連して起こることを意味する。新JICAは、このような相互に関連した問題に対して、開発援助の面で対応するために、世界の当面のニーズと長期の開発に向けて技術協力、円借款、無償援助などを統合して当たることを目的としている。つまり、日本の開発援助のハード面とソフト面を総動員してベストな結果を出すことを目指しているといえる。
  今回特別なソフト面として、JICA内に新しい研究所が創設され、国内外の優秀な研究者を結集して経済的、政治的および社会的開発に関する研究活動を行う。このような研究は、貧困の問題を単に福祉や慈善によってではなく、経済的な機会を広げ、成長を促進することで解決を図るために、非常に重要となる。そのために、純粋に学問的な視点よりも、例えば先日横浜で開催されたアフリカサミット会議で議論されたように、アフリカ地域にある発展途上国に対して全体として有効な効果をもたらすような統合的な立場から研究を行うことが求められよう。しかしながら、この研究所はまだ開設されたばかりで、活動の詳細などは今後の課題である。
  新JICAはその目的を遂行する上で、以下の3つの「S」をモットーとする。第1の「S」は、「スケール・アップ」で、今回の統合で事業規模が1兆円を超える世界最大の一国の援助機関となるので、それに応じて単純なプロジェクトは必要に応じてもっと総合的なプログラムに格上げして、様々な援助活動を拡大する。第2の「S」は、「スピード・アップ」である。現実の世界の動きはますます加速しており、JICAも本部集中型のオフィスから各地域に活動の中核を移すことがすでに進んでおり、それによって事業の規模と同時に遂行のスピードをさらに上げることが課題である。第3の「S」は、「スプレッド・アウト」で、これは援助対象国をさらに広げるという意味と、協力団体をもっと多方面に広げて、世界銀行やユニセフといった組織だけでなく、各国のビジネス界などとも連携を強めるという意味があり、それによって援助の目的をよりよく果たすようにすることが重要である。
  最後に緒方理事長は参加者に対して、日本が世界の国々から期待されている国際的役割を開発援助の面で果たすことが出来るよう支援と支持を呼びかけた。そのような役割を、現下の日本の政治経済情勢のもとで果たすことができるかどうかが、講演後の質疑応答の中心的なテーマとなり、それに対して緒方理事長はプラスで前向きな姿勢と内容で応答した。この講演会は、最近では最も印象的な日本外国特派員協会でのランチョン・スピーチであったといえる。

英語の原文: New JICA President Sadako Ogata on Mission and Mottos: Luncheon Speech at FCCJ
http://www.glocom.org/special_topics/
activity_rep/20081006_miyao_fccj/
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