大竹教授は英語の論文(以下のリンク参照)において、まず日本ではこのところ、高齢者にかかわる年金問題や医療保険問題が政治を左右するようになり、次の総選挙の争点にもなっていることを指摘する。
この背景には、日本の急速な高齢化があり、しかも有権者に占める高齢者の割合が急上昇している上に、高齢者のほうが若年者よりも投票率が高いので、高齢者の政治力が急速に強くなっていることがある。その結果、高齢者が望む政策に対する支出が増える傾向がある。例えば、高齢者が社会保障の増加を望み、義務教育の増加を望まなければ、前者に対する政府の支出が増えて、後者に対する政府の支出は減るであろう。
実際に、最近公表された統計によると、1990年以前は、40歳代から60歳代の年齢層の投票率は80%以上と高く、30歳代の投票率がそれに次いで70%を超え、最も低い20歳代でも60%前後の投票率があった。70歳代の投票率は、70%前後で推移していたのである。しかし、90年以降、20歳代と30歳代の投票率が大きく低下し、40%から50%程度に落ち込んでしまった。ところが、60歳代以上の年齢層の投票率は、80%前後を保っているのである。
つまり、団塊世代が政治で一番大きな力を持っており、その世代が60歳代に入ってきたので、高齢者の政治力は高まる一方である。したがって、高齢者層が若年世代や将来世代にツケを回す政策を推す結果として、そのような政策が採用されてしまうバイアスを防ぐ仕組みをつくらなければならない。例えば、未成年の子供を持つ親に、子供の数に比例して投票権を与えるといった工夫が必要であると、大竹教授は主張する。
英語の原文:
On Increasing Political Power of Senior Voters in Japan
http://www.glocom.org/opinions/essays/20081024_ohtake_on/