米のCSIS(戦略国際問題研究所)パシフック・フォーラムは、英語の論文(以下のリンク参照)において、米大統領候補のアジアに関する政策を包括的に比較検討している。その要旨は以下の通りである。
1)東アジアの全体的な優先度について:
オバマ氏: 米国のアジアでのリーダーシップを維持すべきであるが、急成長する中国やインドなどには新しい対応が必要であり、アジア諸国と足並みをそろえて進むべきである。
マケイン氏: アジアの再生は太平洋地域にとって望ましい展開であり、米国はこれまで築いてきたアジアでのリーダーシップと各国との友好関係を増進し、同盟を強化していく。
2)日米同盟について:
オバマ氏: 日米同盟は戦後もっとも成功した関係であり、今後ともアジア地域と世界全体の平和と繁栄のために協力関係を深めていくべきである。
マケイン氏: 日米同盟は過去60年間にわたってアジア太平洋地域の要であり、それがさらに深められよう。特に日米は、中国が平和的に国際社会に統合されるよう努力すべき。
3)米中関係について:
オバマ氏: 中国に対しては新しいアプローチが必要で、6カ国協議で示されたような協力関係を他の分野でも築くべき。ただしそれは中国が国際的ルールに従うことが前提となる。
マケイン氏: 中国と共通の利益を追求するようになるために、米国はアジアの他の国との協力関係を強める一方で、中国とは率直な意見交換を行っていくべきである。
4)台湾問題について:
オバマ氏: 中国と台湾の間で関係を深める対話が進むことを期待する一方で、あくまで「一つの中国政策」を支持するが、その上で台湾との関係を武器供与も含めて維持したい。
マケイン氏: 台湾海峡の安全保障強化のために武器供与を支持してきたが、それは台湾が強い立場から交渉することが、対中関係を改善することになるからである。
5)朝鮮半島問題について:
オバマ氏: 北朝鮮をテロ国家リストから外したことは適切であったが、それは北朝鮮が非核化に向けた約束を守ることが前提である。それが破られれば、援助はなされえない。
マケイン氏: 同盟国と協力してもっと北朝鮮に圧力をかけるべき。特に非核化や人権問題、拉致問題などが解決に向かわない限り、制裁を緩めるべきではない。
6)アジアとの経済協力と自由貿易協定について:
オバマ氏: アジア諸国との関係は、これまでのようなアジアからの輸出主導や安い通貨に左右されるのではなく、米国の労働や環境面の基準を満たすものでなければならない。
マケイン氏: 豪州やシンガポールと締結したような自由貿易協定は、アジア太平洋地域の開かれた経済関係を作る上で重要な役割を果たす。今後とも自由貿易を支持していく。
英語の原文:
Presidential Candidate Views on Relations with Asia
http://www.glocom.org/debates/20081028_csis_presidential/