ラルフ・コッサ氏(米CSISパシフィック・フォーラム会長)は、英語の論文(以下のリンク参照)において、自分の個人的見解であると明示した上で、オバマ次期米大統領に対して、アジア政策についてアドバイスを提供している。
まず、これまで発表された多くのアドバイスのように、オバマ氏に対して直ちにやるべきことを述べる前に、来年1月20日までは現職のブッシュ氏が大統領であることを認識して、それまでは現職の大統領の外交政策のじゃまをすべきでないという。
例えば、朝鮮半島の非核化を進めるために、オバマ氏は直ちに高官を北朝鮮に特使として派遣すべきというアドバイスがあるが、今そのような特使を派遣することは決してよいアイデアではない。そのような動きは、現在北朝鮮政府が原則として同意したといわれる核査察方式を明文化しようとする重要で微妙な努力に水を差すことになる。そうなれば、北朝鮮は新政権が動き出すまで数か月間何もしない口実を見出す恐れがある。今は、オバマ氏が現在進行中の交渉結果を尊重するというシグナルを送ることが必要であろう。
むしろオバマ氏が就任前に対話すべき相手は、北よりも南の韓国である。米韓関係は、このところ北朝鮮政策でも自由貿易協定でも行き違いが目立っているので、その修復が急務である。さらに日本に対しても今からシグナルを送り、民主党は共和党ほど日本びいきでなく、ますます中国に傾いていくという多くの日本人の抱くパーセプションを払拭する必要がある。そのために、国務省や国家安全保障委員会の重要メンバーとして日本通の重鎮、たとえばトム・ダシュル上院民主党リーダー、ジョセフ・ナイ氏、リチャード・ アーミテイジ氏、あるいは現実的ではないが、アル・ゴア元副大統領などを起用することも考えてよいのではないか。
皮肉なことに中国も、民主党政権のもとで日米関係が変化する以上に、米中関係が通商問題や人権問題などによって悪化することを憂慮している。ここでもオバマ氏は、ブッシュ政権が近年米中関係で強調してきた「責任あるステークホールダー」という言葉を繰り返して重要なシグナルを送ることができる。そうすることで、米中関係の連続性を明確化することが、米中両国だけでなく、日本を始めアジア諸国にも安心感を与え、歓迎されるであろう。
オバマ次期大統領は、国内問題や中東など他の地域の難しい問題に取り組むためにも、東アジアに対する政策として、六カ国協議の枠組みを支持し、日本と中国に対する友好関係の維持を意味する言葉を注意深く選んで表明することこそ、今後のことを考えると今最も必要ではないかと、コッサ氏は述べている。
英語の原文:
(Unsolicited) Advice on Asia Policy for President-elect Obama
http://www.glocom.org/opinions/essays/20081106_cossa_advice/