平壌が六カ国協議への参加取り止めを宣言し、原子炉稼動再開による脅威や、4月5日の北朝鮮のミサイル発射実験を非難する国連安全保障理事会における拘束力のない議長声明の採択にともなう核抑止力の強化のなか、進行中である北朝鮮の非核化の運命は、緊急な政策論争を呼ぶ重大な問題である。
北朝鮮のミサイル発射の動機には様々な憶測が広がる。アメリカに向けたミサイルが実際に届く力があるという軍事力の示威運動、この発射を観察し、その報告書を得るのではないかというイラン人への試験販売、オバマ新政権への忘れられたくない歓迎の挨拶、あるいはその全ての集結ではないのかという憶測である。その動機は何であれ、このミサイル発射実験は、平壌で政治的王位継承の最中に行われたという、広い意味での北朝鮮の政治状況のなかで位置づけられることが大切である。
金日成は、最近公開された朝鮮中央通信の公式な写真から判断すると、以前より遥かに衰えたようである。昨年夏の健康悪化から立ち上がり、最近平壌を訪れた中国高官らの話しによると彼の健康はかなり回復したようである。それにもかかわらず、親愛なる指導者は、生命保険数理法からすると、自身への風当たりはかなり強くなっていることを理解すべきである。安全な王位の継承を可能にする現政権の安定を確実にすることは、平壌にとって、政治的に緊急の課題である。
……………………………(中略) ……………………………………………
六カ国協議について言えば、ミサイル発射実験は現行の外交の枠組みに揺すりをかけ、米国との二国間の直接交渉に持っていこうとする意図があったことは想像できる。主席代表はその"おとり"に落ちて策略を変えることは誤りだろう。北朝鮮のミサイル兵器保有は、米国のみならず、日本や韓国、中国、さらにロシアにとっても脅威であり、これからも対話を続けていく必要があるだろう。
しかし更に大切なことは、六者会合の究極の目標は、北朝鮮の非核化であることを見失ってはいけないという点である。平壌を交渉の場に戻そうとする、時間を無駄にするような新たな発案や新たな旨みを見つけようとするべきではない。それらの努力は単に時間の無駄であろう。平壌は、この見返りのメニューを熟知していて、現時点で、それらの行動は別の選択肢があることを明らかにした。王位継承の原動力を考え合わせると、理解出来ることである。
我々としては、少なくとも五カ国でも六者会合を続け、その準備が出来たときには、平壌が再び参加出来るように扉を開けておく必要がある。事実上、我々は、平壌の新たなリーダーが北朝鮮の安全と繁栄について前任者と違った理解による安定した王位継承が行なわれるという希望を持って、時間をもてあそんでいるといえる。
これは核を持った北朝鮮との共存を意味するのであろうか。その答えは、「イエス」である。しかし、核と共存することは、それを受け入れることとは同じではない。我々の外交努力は、あくまで非核化であり、我々の安全保障政策はそのままの世界を扱うことであるので、これには時間がかかるであろう。広範な核抑止への責任は、我々の外交、安全保障政策や我々の同盟国の両方を支える意味で、決定的に重要である。
(プジスタップ論文の全文については、以下を参照)
英語の原文:
North Korea's Missile Test and the Road Ahead
http://www.glocom.org/opinions/essays/20090422_james_north/