金融危機が始まって以来、米国と中国によるG2を形成するべきであるという提案がなされてきた。この提案は、中国が米国の最大の債権国であり、米国は中国の最も大きな貿易輸出国であるという事実に基づいていて、両国の経済の強い相互依存は両国の協力によって世界経済を形作る土台を提供するであろうと考えられている。G8が力の均衡において旧時代性を反映するとき、あるいはG20が世界への挑戦に対する対応が薄められてしまうとき、こういった考えは興味深く感ずる。
しかし、G2はより強い世界統治に対して誤った仮定を与え、おそらく中国はそういった役割は果たさないであろう。以下説明させて欲しい。
中国の主な焦点はいまだに自国の経済発展である。1月29日のダボスでの温家宝首相の声明をもう一度読んで欲しい。「安定して成長の早い中国の経済は、それ自体世界金融の安定への重要な貢献である」と。あるいは、全人代(全国人民代表大会)の閉会の言葉をみてみよう。「これから予想される更なる難局に対して、充分な援助体制は準備出来ていて、必要であれば、新たな景気刺激策も始められる。」その主要な優先順位は、まったくありのままに、中国経済の活性化である。これは共産主義体制の正統性の原型を保ち続けるということである。その関連性が崩れることがあれば、問題を露呈することになるだろう。同時に、今年2009年は、チベット問題や1989年の天安門事件の記念式典などがある微妙な年である。金融危機による社会不安は、より高まるであろう。中国は多くの点で他を省みない内向きな思考を続けるだろう。
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更に、米国と中国の経済協力はより求められるであろうが、世界統治は経済以上のものである。中国は本当にパキスタンやアフガニスタンに安定を齎すことが出来るであろうか?ヨーロッパの兵士達は、ヘルマンド川では、中国軍ではなくアメリカ軍のすぐ脇に配置した。中国は本当に朝鮮半島から核を廃絶することが出来るであろうか、あるいは、危機解決のために安全や危機回避を望むであろうか?韓国や日本といった同盟国と米国の関係は不可欠なものであり、北朝鮮問題を包括的に解決することが出来れば、ヨーロッパ諸国は、1990年代のKEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)において彼らがそうした様に、貢献を求められるであろう。中国政府は、多国間関係においてより責任のある利害関係者としての役割を担おうとするであろうが、中国の外交政策は未だに根深く非介入主義であり、せいぜい紛争回避がいいところであろう。
中国はG2としての役割が与えられるとすれば、世界統治において、より偏狭な懸念を持ち込んでくるかもしれない。おそらく未解決の国境論争のために、中国はアジア開発銀行からのインドへの借款を最近打ち切ったことをみれば明白であろう。今後のIMFからの借款は、与えられる国の台湾やチベット問題に対する見解次第ということになってしまうかもしれない。
米国と中国の関係は、最も大切な二国間関係のひとつである。米国と中国の関係にはきっちりした協調体制が求められ、おそらくプラザ合意のようなものが両国に利益を齎すだろう。けれどもそれをG2へ置き換えるということになれば、約束を果たすことが出来ない世界統治という幻想をつくることになるかもしれない。
(プレスナー論文の全文については、以下を参照)
英語の原文:
The G 2: No Good for China and for World Governance
http://www.glocom.org/debates/20090514_g2_plesner/