ビルマとアウン・サン・スーチー氏は、また再びニュースのヘッドラインを賑わせている、それも全て誤った理由からではるが。我々は、なぜミズーリからのジョン・イエットーと確認された愚かなアメリカ人が、彼女が長年軟禁されている邸宅へ無断で入り込み、彼自身とスーチー氏を有罪になる可能性のある状況へ持ち込んだのか、決して理解することは出来ないだろう。現軍事政権は、この事件を利用して彼女の自宅軟禁期間を延長しようとすることは明らかである。さらに悪いことに、公式には彼女の自宅軟禁は間もなく終わる予定であったけれども、軍事政権はこれによって彼女の自宅軟禁を長引かせる理由がみつかったのではないかと疑問を呈する者いる。これに対する国際的な反応は予想出来るが、アウン・サン・スー・チー氏の釈放の要求は戦略的ではなく、彼女が重要で象徴的であるだけに、彼女に独占的に焦点を当てることは、解決には結びつかないであろう。
ヒラリー・クリントン国務長官が述べたように、米国のビルマへの政策は、彼女の夫のクリントン政権に続いて、その前後のブッシュ政権においても、機能しているとは言い難い。「明らかに、制裁を科すという我々がとってきた政策は、ビルマの軍事政権には影響を与えていない」と彼女は2月中旬のインドネシアの滞在時に述べた。もちろん、彼女の意見は全く正しいと言える。
東南アジア、あるいは別の場所でも「私が言った通り」という合唱が始まる前に、クリントン国務長官もまた、ビルマ近隣の東南アジア諸国も同様に、未だにこの世界に残っている独裁的で横暴な国家―アジアではそのトップとして北朝鮮だけがビルマに比肩し得るーに対する必要とされた、あるいは期待された改革をもたらすことに失敗したと、平等に正しく、観察していた。
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これを終わらせるためには、米国とASEANが、我々のルールではなく、軍事政権自身の基準によって、彼らに約束を守らせるための戦略に合意することである。軍事政権は、「民主主義への道筋」(正式には「秩序に基づいた民主主義」であるが、短い言葉で用いられることが多い)では、7段階中の5段階であるという。今こそ、「自由で公平な選挙」を実現し、2010年までに市民政府へ手綱を渡すときである。ビルマのテイン・セイン首相が、今年初めのタイでの年次サミットにおいて仲間のASEAN各国へ繰り返し約束したように、ビルマは2010年の選挙において、国連の監視を受け入れるかもしれない。彼らを憲法や国民投票まで持っていくまでは、米国はASEANと手を合わせ、軍事政権のこの約束を守らせる努力を続けるべきで、少なくとも米国と他のASEAN諸国は見方であり、必要な場所にスポットライトを当て、圧力を加えるべきである。
けれども、国民民主連盟(NLD)が、予想されているように来る選挙をボイコットし、全ての政治的捕虜を解放せず、軍事政権が新たな憲法の見直しに賛成するとしたら、このアプローチはうまく機能しないであろう。これは誤りである。このような決定は、他のASEAN諸国がその指針(民主主義への道)に従っていくと思っているうちに、現軍事政権に後継者を選べるようにさせてしまうだろう。今回の不法侵入によるアウン・サン・スー・チー氏への新たな捏造されつつある容疑は、彼女の自宅軟禁を続ける一方、NLDが(自ら次回の選挙を)ボイコットする方向へ向かっていくというふたつの意味合いがあることに疑問の余地はない。NLDにとっては、前回の選挙で投票してくれた多くの人々に再度の信任を得、軍事政権が「自由で公平な選挙」を守ると呼びかける間に選挙戦に入り、他のASEAN各国にそうすると確信させることがより自らのためになるであろう。このようにして、アウン・サン・スー・チー氏の軟禁は、より多くの人々を選挙へ行かせる触媒となり、1990年と同様に現政権を脅かし、今回こそASEANと他の世界との約束を守るときである。
彼女が特別な制限なしに自宅軟禁から解放されていた短い間に、ラングーンのNLDの本部で私が外国人として初めて講演をした2002年に、アウン・サン・スー・チー氏と(公式に)面会出来たことは、喜びであり名誉なことであった。彼女はかつて、そして今でも大衆に完全に崇敬された、真に鼓舞された人物である。また長年の孤立や自宅軟禁の間でも、疑いなく自分自身を堅実に保つ特質を持ち、意志を曲げることなく、信念を譲らないということにも私は気付いた。しかし、NLDやアウン・サン・スー・チー氏にも柔軟な姿勢が求められ、ルールを変えるのではなく、ASEAN、米国政府や他国と一緒に協力することによって、自身の戦いにおいて軍事政権を負かす時が来たと言える。もしそれが実現すれば、民主主義へのロードマップは実際(最終的に)文字通りの意味を見出すようになるであろう。
(コッサ論文の全文については、以下を参照)
英語の原文:
Burma: Time for a New Approach
http://www.glocom.org/opinions/essays/20090519_cossa_burma/