5月17日に、現職のマンモハン・シン首相が、インド下院連邦議会の第15回総選挙において、立派な勝利を収めた。彼の政党の選挙前の楽観的な世論調査の予想さえ上回り、与党国民会議派は、(改選)543議席のうちの206議席を獲得した。それとともに、国民会議派率いる中道左派の与党連合の統一進歩同盟(UPA)を含めると262議席となり、完全な過半数にわずか10議席足らずというところまでになった。
以前は敵対的であった第三戦線からも文書での支持宣言を受け、連立与党は両議院での安定過半数が予想され、5年の任期を任され、連続して政権に就く第三の政府となる。さらに、前政権の連合によって齎された、狭い意味でのイデオロギー的な、あるいはカースト制度の排他的自己中心主義からの束縛から放たれ、シン首相は内閣主導の統治のシステムにおけるより大きな政策の一貫性を再構築することが期待されている。
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しかし、究極的には、シン政権にとっては、国内の経済政策が最も大切な課題である。財政的に無責任といえる再分配主義に支えられた第二期を迎え、国民会議派の希望や意志自身を、卑しい人気政策から救い出すことが出来るかは、議会の過半数や首相の個人的な誠実さや博学にもかかわらず、疑問の残る点である。
彼の父であるラージーヴ氏が国民に熱心に説いた、立派で新しいグローバル化する世界とはかけ離れて、ラフル・ガンディ氏のインド政治における最高峰への昇進は、タカ派が彼の祖母の反貧困政策やコーポラティズムを支えたという政治的物語によって、掻き立てられた。価値のあるスローガンを包括したグローバリゼーション、それ自体が指し示すように、経済新興国のなかでもインドは、最もグローバル化が遅れていて、雇用インセンティブによる成長によりグローバル市場が機能する能力は、ほとんど存在しないも同然のように取るに足らないものとなっている。そして、実際、どのように新たなシン政権が、生産性が低く、雇用活力のない成長モデルを改造し、より力強い基盤へ持っていけるかが、首相の遺産によって審判される試金石と言えよう。
(グプタ論文の全文については、以下を参照)
英語の原文:
Verdict India 2009: Congress Rises with its Heir
http://www.glocom.org/debates/20090527_gupta_india/