アフガニスタンとパキスタンの政治的・社会的安定は、全く見込みはないという状態ではないが、それでもかなり微妙な状況である。米国や北大西洋条約機構(NATO)、国際治安支援部隊(ISAF)の加盟国からの軍隊が、アフガニスタンでテロリストやタリバン急進派部隊との戦いを続けている。その一方、パキスタン軍は自国の領土で同じグループと戦い、国境の難民問題は急を要する課題となっている。アメリカ軍はその重い任務に押しつぶされそうになりながらも、米国政府はより多くの米軍兵士によって、アフガニスタンに安定を齎し、再建が進むことに望みをかけている。より多くのNATO兵の介入によって解決しようというオバマ政権の試みは失望に終わった。オーストラリアやニュージーランドといった他のISAF国は勇敢に貢献しているが、その資源は少なく、重い任務に苦しんでいる。
米国とISAF各国はアフガニスタンやパキスタンの安定を助けるのみならず、中央アジアから南アジア地域にかけての緊張の緩和を齎すために、より東への展望を考慮するかもしれない。中国、日本や韓国は、この地域での共通の戦略的利益を持ち合わせ、中央・南アジアの他の協力国との高まる政治的・経済的関わり等によって、アフガニスタンやパキスタンにおける安定への希望をも共有している。
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中国や日本、韓国もまた、世界市場により活力を齎すこのような交通網の確立を望んでいる。この地域における協力によって、ソウルと東京は、最近では下降しているワシントンとの同盟関係を支えることにもなるであろう。中央アジアから南アジアにかけての交通ネットワークの拡大と改善は、麻薬、テロリスト・グループや伝染性の病気をより簡単に運搬するかもしれないという点から、諸刃の剣とみられる可能性もある。しかし、この地域と北東アジアの経済協力と地域の発展による長期的利益は、短期的問題よりもより重要であるとみられる。
アフガニスタンに協力することによって、北東アジア諸国は、各々の戦略的利益とより重要性を増す米国政府との関係の改善に満足し、それらに加え、北京、ソウルや東京は、米国に支配された国際システムへのただ乗りではないかという主張を脱ぎ捨てることにも繋がるだろう。これらの国々と米国との関わり、あるいは各国間の関係の深まりによって、それら各国の地域における協力や連携努力の拡大という新たな機会が創造されるであろう。
(論文の全文については、以下を参照)
英語の原文:
A Northeast Asian Solution for Af-Pak
http://www.glocom.org/opinions/essays/20090714_ferguson_afpak/