クラーク氏は、日本の経済政策について、先に発表されたバブルの総括に関する
行天氏の論文を採り上げ、その論文で指摘されたことは、バブル当時からは同氏を含めた少数の人々が主張していたことであると指摘し、更に、根本的問題はまだ解決していないと主張する。
その頃すでに、クラーク氏をはじめとする一部の人々は、日本には土地が不足している訳ではなく、価格の急騰は歪んだ土地税制とバブル心理によって需要が先行したためであると主張したが、当時は見向きもされなかった。
行天論文にもある通り、政府・金融当局をはじめとする関係者は、当時の政策の間違いを反省し、多くを学んだという。しかし、当時の政策を反省しているということをもって、今正しい政策が採用されているということにはならない。実際、景気刺激策の乏しさや、銀行の不良債権整理が回復に繋がるという伝説に縋っている状況を見ると、甚だ疑問である。
政策担当者は、いわゆるサプライサイド、つまり1980年代の需要過剰・供給不足の英米経済に適用された供給面重視の経済政策が日本でも有効であると思っているようであるが、実は日本は今全く逆の、供給過剰・需要不足の状態にある。また、今の政策担当者は、緊縮財政派の後盾を得て、政府がギャップを埋めることを志向したケインズ経済を古いものとして捨て去ってしまっている。
しかし英米経済でも、供給の効率化が需要より重要であるか否かは議論の対象となっている。事実、今の英米の景気を支えているのは、生活水準向上のための需要であるが、日本では同様の傾向は見られない。日本の問題は、過剰貯蓄が需要を喰ってしまっていることであり、これは英米とは逆である。
バブル後、日本はケインズを学んだ宮沢首相の下で1996年には不況回復の兆しが見られた。当時更に必要であった施策は、需要を殺がない形での合理的な税制改革であった。しかしその後、米国の影響によるサプライサイド経済派が橋本政権そして小泉政権の中で力を得るとともに、問題は再び深刻化してきている。
英語の原文: "Economic Malaise -- Blame Supply-Side Policies"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20041004_clark_economic/