企業経営の国際化が世界の趨勢となる中で、日本でも国際化路線を志向する
企業が増えている。ただし、注意しなければならないのは、国際化は経営目
的達成の手段であって、それ自体が目標ではないということである。いかに
国際化が進展しても、それで経営パフォーマンス(業績)が向上しなけれ
ば、かえってマイナスの効果を生むことになる。
そこで、国際化と経営パフォーマンスの関連性について最近のデータ(『会
社四季報』)に基づいて検討した結果、日本の国際化企業66社について、以
下の4つのグループに大別できることが判明した。
I. 「国際化チャンピオン」(グローバル化もパフォーマンスも高水準の33
社):売上高ではトヨタが筆頭であるが、国際化の指標である海外売上高比
率のトップは船井電機、パフォーマンスでは任天堂とファナックがトップ。
II. 「国際化チャレンジャー」(パフォーマンスは良いが国際化は低水準の
14社):売上高1兆円以上の企業が、松下、東芝、武田製薬など7社あるが、
高いパフォーマンスを維持しつつ、いかに国際化を進めるのかが課題。
III. 「パフォーマンス・チャレンジャー」(国際化は高水準だがパフォー
マンスは低い14社):売上高1兆円以上の企業も6社あるが、パフォーマンス
は非常に低く、経営の手段と目的の取り違えが起こっている可能性も。
IV. 「問題児」(国際化もパフォーマンスも低水準の5社):過去に国内市
場で優位を誇っていた日立やNECといった巨大企業が含まれているが、今や
世界的な視野に立って体制を立て直すことが望まれる。
長期的トレンドとサイクルについては、国際化チャンピオンの代表的企業10
社について過去25年のデータを検討した結果、以下の点が明らかになった。
(1)国際化やパフォーマンスの指標の推移には山谷のサイクルが認められ
る。(2)経営パフォーマンスのさまざまな指標が同時にピークやボトムを
経験することは少ない。(3)国際化や経営パフォーマンス向上には、相当
期間、継続した努力の積み上げが必要。特に海外売上高比率が50%以下の場
合、国際化の推進が経営パフォーマンスを低下させる傾向があるので注意が
必要である。
今後の動きを展望するために、直近の2年のデータを比較したところ、すべ
ての部門で国際化が進展していたが、経営パフォーマンスの変化はさまざま
であった。したがって結論として、国際化が進展するなかで経営パフォーマ
ンスを維持・強化するには、国際化と経営パフォーマンス指標に関するトレ
ンドとサイクルを認識し、その間のバランスを保ちつつ、適切にして自在な
経営の舵取りを継続していかなければならないといえよう。
英語の原文: "Internationalization and Business Performance of Japanese Corporations"
http://www.glocom.org/opinions/essays/
20070514_kobayashi_international/