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注目記事(2007/5/14)

Opinions:
 
「日本企業の国際化と経営パフォーマンス」
 小林規威 (慶應義塾大学名誉教授)
  
  企業経営の国際化が世界の趨勢となる中で、日本でも国際化路線を志向する 企業が増えている。ただし、注意しなければならないのは、国際化は経営目 的達成の手段であって、それ自体が目標ではないということである。いかに 国際化が進展しても、それで経営パフォーマンス(業績)が向上しなけれ ば、かえってマイナスの効果を生むことになる。
  そこで、国際化と経営パフォーマンスの関連性について最近のデータ(『会 社四季報』)に基づいて検討した結果、日本の国際化企業66社について、以 下の4つのグループに大別できることが判明した。
  I. 「国際化チャンピオン」(グローバル化もパフォーマンスも高水準の33 社):売上高ではトヨタが筆頭であるが、国際化の指標である海外売上高比 率のトップは船井電機、パフォーマンスでは任天堂とファナックがトップ。
  II. 「国際化チャレンジャー」(パフォーマンスは良いが国際化は低水準の 14社):売上高1兆円以上の企業が、松下、東芝、武田製薬など7社あるが、 高いパフォーマンスを維持しつつ、いかに国際化を進めるのかが課題。
  III. 「パフォーマンス・チャレンジャー」(国際化は高水準だがパフォー マンスは低い14社):売上高1兆円以上の企業も6社あるが、パフォーマンス は非常に低く、経営の手段と目的の取り違えが起こっている可能性も。
  IV. 「問題児」(国際化もパフォーマンスも低水準の5社):過去に国内市 場で優位を誇っていた日立やNECといった巨大企業が含まれているが、今や 世界的な視野に立って体制を立て直すことが望まれる。
  長期的トレンドとサイクルについては、国際化チャンピオンの代表的企業10 社について過去25年のデータを検討した結果、以下の点が明らかになった。 (1)国際化やパフォーマンスの指標の推移には山谷のサイクルが認められ る。(2)経営パフォーマンスのさまざまな指標が同時にピークやボトムを 経験することは少ない。(3)国際化や経営パフォーマンス向上には、相当 期間、継続した努力の積み上げが必要。特に海外売上高比率が50%以下の場 合、国際化の推進が経営パフォーマンスを低下させる傾向があるので注意が 必要である。
  今後の動きを展望するために、直近の2年のデータを比較したところ、すべ ての部門で国際化が進展していたが、経営パフォーマンスの変化はさまざま であった。したがって結論として、国際化が進展するなかで経営パフォーマ ンスを維持・強化するには、国際化と経営パフォーマンス指標に関するトレ ンドとサイクルを認識し、その間のバランスを保ちつつ、適切にして自在な 経営の舵取りを継続していかなければならないといえよう。

英語の原文: "Internationalization and Business Performance of Japanese Corporations"
http://www.glocom.org/opinions/essays/
20070514_kobayashi_international/
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