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注目記事(2007/7/9)

Opinions:
 
「増税なき財政赤字の解消策」
 原田泰 (大和総研チーフエコノミスト)
  
  現在日本では財政赤字が深刻な問題となっており、かなり大幅な増税が緊急に必要と広く考えられている。しかし、この財政赤字はそれほどの増税なしに解決できる。それには2011年まで財政支出を抑制し、デフレを止めるだけでよい。ここで、2011年までの財政支出抑制とは、2011年以降はGDPの名目成長率と同じ率で歳出を増やすことが可能ということである。
  現実は、「失われた10年」からの脱却とデフレーションの終焉による歳入増加によって、最悪の状況はすでに過去のものとなった。もしその影響を考慮せずに大幅な増税を行なえば、行き過ぎのリスクとともに、財政規律を緩め、財政再建をより困難にする危険も大きい。
  日本の財政制度では、中央政府が実質的に地方の財政をコントロールしているので、中央と地方の両方からの歳入全体の状況を見る必要がある。その全体の歳入総額は2006年7月で94.9兆円であり、もし地方税収の増加率が中央と同じならば、2007年には104.2兆円になると予想される。さらにここ2年間で政府の歳入の合計は10兆円増加すると予想されるが、それは消費税4%に相当する税収増である。このような大幅な増収は、景気回復の初期段階で起こるため長続きはしないが、それでも今後はGDPの名目成長率と同程度の安定した増収が期待できよう。
  財政支出については、政府の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」によれば、歳出(中央と地方の合計)は、2011年には113.9兆円と予想されており、その後GDPの名目成長率と同程度の成長が見込まれると筆者は予測する。長期国債の利率は、GDPの名目成長率と同じ3%程度で推移するであろうから、2035年までの歳入、歳出、国債累積残高、名目GDP成長率などを勘案すると、プライマリー・バランス(借り入れを除いた歳入マイナス過去の借金の支払いを除く歳出)は2009年には黒字に転じると予想される。国債発行残高のGDP比率は、2007年の150%から2035年には106%に減少すると予測される。
  これらの見込みからすれば、日本の財政は、増税なしでもかなり健全化される。増税の議論をしないのは無責任であるとの声もあるが、早すぎる過度の増税は、財政支出削減の努力を弱めると懸念される。最近の増税の動きを見ると、政府は財政支出削減についてそれほど前向きではないことは明らかだが、増税の議論は、今後の税収の動向を確認するまでここ数年間は延期することができる。またそうすることは、長期的な財政再建にプラスになるであろう。
英語の原文: "Solution to Budget Deficit in Sight"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20070709_harada_solution/
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