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中国と日本、パート2:将来展望と政策

行天豊雄 (国際通貨研究所理事長)


オリジナルの英文:
"China vs. Japan: Part 2 - Future Prospects and Policies"
http://www.glocom.org/opinions/essays/200302_gyohten_china2/


要 旨


儒教国家としての中国
中国を中心とする「儒教文明」では、いわば倫理よりも現世の利益を追求する傾向がある。現在、中国では無倫理に現世の利益を追求するようになっており、それが経済発展を進める要因になっている。


一方、欧米の資本主義の歴史は、人間の欲と倫理による抑制が車の両輪のようにバランスを取って発展してきたといえる。それに対して、中国では倫理による抑制の部分がなく、欲だけで経済を推進しているところがあり、それが経済発展にとって大きなエネルギーとパワーになって中国に有利に働いている。


ある歴史家によれば、中国の共産主義独裁政権は、21世紀末までには必ず倒れると言っている。それに対して他の歴史家は、中国の帝国の歴史をみると、ほぼ300年の周期が観測できるので、現在の「帝国」も300年は続くと予想している。ただしそれがいつ始まったかについては、1840年のアヘン戦争の頃と言う人もいるので、もうまもなくピークを打って、今後さらに150年ほどは下降の時代を続けるのかもしれない。


いずれにしても、中国は北京オリンピックや上海万博までは高度成長を遂げて、近い将来、少なくともアジアでもっとも影響力を持つ国になることは間違いない。共産党政権は、きわめて賢いやり方で当面は高度成長を維持し、社会を安定させて、一般大衆に不満を持たせないようにやっていくであろう。


中国の政治・社会的矛盾
しかし、そのような中国の安定は表面的なもので、現在の政治体制には深刻な問題が内在している。共産主義体制のもとでは、政権に反対する意見は許されず、もちろん野党を作ることはできない。政治的に分権化が望ましいと思っても、連邦制などを提唱することは不可能である。


現体制のもとでの抑圧は明らかであるが、一般大衆は経済が発展し生活水準が高まっている限りはあまり問題にしていないようである。しかし、この状況はそう長く続くことはなく、遅かれ早かれ内部の矛盾が表面化するであろう。もっとも、中国の指導者はこのことをよく知っているので、長期的に徐々に民主化と西欧化を進めるであろうと言う人もいる。しかし、そうなる可能性は少ない。中国の内部の矛盾はあまりにも大きく、それが完全に開かれた先進社会になるためには根本的な変革が不可避であろう。


問題はそれがいつ起こるかということである。明らかに、今後5年や10年で起こることはない。中国は今後10年間は年率7%程度で成長を続けることができる。しかし、これが今後30〜40年も続くことはありえない。やがて経済は成熟期に達して、人々は経済的に満たされるとともに、政治的・社会的な不満が出てくるであろう。


すでに中国国内では、様々な格差や不平等が急速に拡大しつつある。事実、沿岸部と内陸部の間の対立は明白となっており、経済がスムーズに発展しているように見えても、持てる者と持たざる者の間の格差は拡大する一方である。また、海外要因も中国にプレッシャーをかけており、WTO加盟により、すでに農作物市場の開放が迫られている。これは中国の農業部門の改革と政治的な変化をもたらす可能性がある。中国は個人主義に基づかない新しいタイプの資本主義を目指すとしているようであるが、グローバル化のトレンドがそれを許さないところまできているのである。


日本の対中関係
日本が中国に対してどう対処すべきかは明らかである。日本は中国が、国内の政治的・社会的矛盾を抱えながら、それでも急速にアジアでもっとも影響力のある国になりつつあるという現実を受け入れなければならない。さらに日本は中国とアジアで同根の国であるという感情を率直に認めるとともに、自分たちが意識的に欧米の価値や社会システムを選択したということも踏まえる必要がある。


もちろん日本は中国に対して敵対的な態度をとる必要はないが、長期的な視点から中国の膨張主義的な政策を抑止するために、米国と密接な関係を保っていくべきである。日米安保条約があるので、日本は核兵器を開発する必要はないが、朝鮮半島の情勢などを考慮に入れると、ミサイル防衛システムのような自衛の体制を強化することは重要である。


しかしそれと同時に大切なことは、日本が中国の人や文化や社会をより深く理解し、日本と中国は今後長きにわたってお互いを必要としているという事実に気づくことである。実際に、日中関係は2000年も続いている世界で最長の二国間関係であり、その事実だけでも高く評価され、大切にされるべきであろう。


中国も日本がアジアで唯一の先進民主主義国であるという重要性を認識すべきである。日本の洗練された文化、先端的な技術、平和主義などは中国やアジア諸国にとって貴重な資源であることを認める必要がある。いずれにしても、中国は戦時中の日本の「侵略」をあげつらう反日的なキャンペーンを止めなければならない。むしろ日中は、お互いの価値を認め合い、同根の関係に基づいて、西側での英米の関係のような長期な友好関係を築くべきであろう。


日本の政策と戦略
日本がやるべきことは明らかで、中国と生産的な関係を築くためには、日本自身の経済と社会を再活性化しなければならない。それには経済の規制緩和により新産業の立ち上げを促進する必要がある。日本の「空洞化」を避けるためには、新しい雇用機会を提供するような新しい市場の創造が鍵を握っている。この点で、日本の低生産性部門の改革が重要である。


日本の低生産性部門の企業の多くは海外に移転し、特に中国に行くであろう。それはちょうど日本の自動車や家電部門の企業が米国市場に移転したように、両国にとって望ましい展開と考えられる。中国自身としても外資や技術の導入に依存しており、日本企業としてはその状況を利用することを考えるべきである。東南アジアなどの市場で中国と競争する問題についても、日本の企業の多くが中国に投資し、中国を拠点にして輸出していることを考えると、グローバル化の時代にあまり企業の国籍にこだわるべきでないともいえる。


おそらく最後まで残るのは、国内での雇用問題についてであろう。この点で、日本は当面の失業問題を考慮するだけでなく、長期的な人口の減少や移民受け入れの問題を考える必要がある。この点でも、中国が日本にとって重要な役割を果たし得るといえよう。


最後に日本は、アジア環太平洋地域における激動の情勢に対処するために外交能力を高める必要がある。この点は、特に中国が経済的にも軍事的にもアジアでもっとも影響力のある国になりつつある現実を考慮すると、これまで以上に重要になってきている。例えば、東南アジアでFTAを推進するために中国がとっている巧妙なやり方に対して、日本がイニシアティブを発揮するために、政治的および経済的な戦略を統合するような外交を展開すべきである。そのためにも、まず日本では、何が日本の国益なのかについて、もっとオープンな議論をする必要がある。それによって、少なくとも政治的および知的なリーダーたちの間で、国家の戦略や政策についてある程度合意を形成することが望まれるのである。

(完)

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