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より大きな脅威に注意せよ

ラルフ・コッサ (CSIS太平洋フォーラム)


オリジナルの英文:
"Don't Ignore Greater Threat"
http://www.glocom.org/debates/20030303_cossa_dont/


要 旨


このところワシントンでは、北朝鮮とイラクのどちらが大きな脅威なのかについて大きな論争が巻き起こっている。


その答えは簡単である。今日、北朝鮮のほうがより大きな潜在的および現実的な脅威となっている。この国は、実際に化学・生物兵器を保有しており、最悪のケースを想定した分析では北朝鮮が2つほど原子力兵器を持っているという。たとえこれらの大量破壊兵器を持っていなかったとしても、北朝鮮は南のソウルに大きな打撃を与える能力を持っているという意味で、最大の脅威となっている。


しかしながら、この事実は米国政府がイラクに圧力をかけることを止めて、北朝鮮に対する軍事力を増強すべきであることを意味しない。また逆に、軍事的な行動を取っていないからといって、決して北朝鮮の「危機」を無視しているわけではない。


米国政府はいろいろと批判されているが、イラクに対しても北朝鮮に対しても積極的な外交工作を行っているようにみえる。ブッシュ米大統領はいずれの問題に対しても、国連の安保理により積極的な役割を果たすよう望んでいるが、逆に多くの安保理のメンバー国は政治的に気乗りのしない決定をしなくてもすむように、米国が一方的に事を起こして勝手に進めてほしいと願っているかのようにみえる。


イラクへの武力行使は、最後かつ最も望ましくない選択であるというブッシュ大統領の主張に反論する人は少ない。しかし、米国の軍事的圧力なしに、今日イラクに対して行われているような徹底した査察が行われたとは考えにくい。フランスなどが理解していないのは、武力の行使を避ける最善の方法は、それを行使する意思をはっきりと示すことだということである。サダム・フセインは瀬戸際作戦の専門家で、瀬戸際まで行かないと協力しない。彼が強力を惜しめば惜しむほど、それだけ戦争の可能性は高まる。


武力行使がサダム・フセインによる大量破壊兵器の開発よりも悪いというならば別であるが、そうでなければ、すでに瀬戸際まできたと確信を持ってアナウンスする時がきた。もし米国が単独で(あるいは協力国と連合して)、国連の承認なしに戦争を起こすならば、最初に失われるものは、国連安保理が維持したがっている多国主義のプロセスである。


ブッシュ大統領は、多くの人の目からして少し急ぎすぎているように見えるが、もう時間は残されていない。イラクがちょうど北朝鮮がそうであるように、周辺国に対して大きな脅威になるまで待っていては、事態が悪化するばかりであろう。


一方、米国政府は北朝鮮を無視することなく、あらゆる選択肢を考えているが、北朝鮮を武力行使で威嚇するのはまだ適切ではない。しかし、北朝鮮に対して大きな声で非難してもあまり効果はないが、だからといって、もし国連安保理が出てくれば第三次世界大戦を起こすなどと言っている北朝鮮をそのままにしておくこともまた適切ではない。放置すればますます増長する可能性があるので、「いい加減にしろ」というメッセージは送る必要がある。


金大中現韓国大統領が次期大統領にその座を明け渡す2月25日までにすべきことは、北朝鮮が核開発凍結の合意を守らなければ、韓国の「太陽政策」も南北対話も一時的に停止せざるをえないとアナウンスすることである。新大統領が北朝鮮の脅威に対して対応する前に金大統領が警告を与えておくことのほうが、物事はより容易になるであろう。


また中国も事態を傍観しているだけでなく、米国が北朝鮮と交渉しようとする態度を推奨し、北朝鮮に対してもし核開発凍結の合意を破れば、中国は北朝鮮を支援しないことを明確にすべきである。またもし中国が国連の総会や安保理で多国主義を本気で支持するのであれば、イラクと北朝鮮に対して彼らの大量破壊兵器の廃棄とその証明をはっきりと求めるべきである。

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