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小泉首相に代わる人物

内田健三 (東海大学教授)


オリジナルの英文:
"Don't Give Up on Alternatives"
http://www.glocom.org/debates/20030306_uchida_dont/


要 旨


前例のないほど高い支持率に支えられて小泉首相が改革を旗印に登場してからほぼ3年が経った。しかし今日では、多くの新聞の社説などで、小泉首相はもう先がないと揶揄されるようになってしまった。しかし、それでも最近の世論調査の支持率で、下がったとはいえ50%近くの数字は維持している。その最大の理由は、誰も代わる人物がいないのでやむをえないというものである。


日本の政治は今後12ヶ月の間に3つの節目を迎えると言われている。3月の年度末、6月の通常国会の会期末、9月の自民党総裁選挙がそれである。さらに、4月の地方統一選挙もある。


小泉政権は、長引く不況、イラクや北朝鮮といった安全上の問題など、いくつかの難問を抱えている。イラクについては、一方で強硬な路線を取る米国や英国と、他方で国連の査察を続けるべきというフランス、ドイツを始めいくつかの欧州諸国との対立がそう簡単に解けるとは思えない。ただし、3月末でこの対立も終わりになるという人もいる。米英同盟がイラクのサダム・フセインに対してしびれを切らして武力行使に出る可能性を誰も否定できない。


北朝鮮の状況も同様に深刻である。日本も米国も韓国もそれぞれ立場が違い、特に日本は難しい情勢にある。それは過去の拉致問題と未来の核開発問題が分かち難く結びついているからである。


もし中東か北東アジアで有事になれば、日本の小泉政権は国際的に平和を擁護するか、米国との同盟を続けるかについて難しい選択を迫られることになる。景気が悪いことも問題を複雑にしており、戦争は原油価格を押し上げて、小泉政権の基盤をさらに揺るがすことになるであろう。


国内に目を向けると、小泉首相は日本銀行の新しい総裁としてついに福井俊彦氏を選んだ。また副総裁として、武藤敏郎氏と岩田一政氏を指名した。はたして、このトリオが「3頭は1頭よりもよい」のか、あるいはそのうち一人がデフレ脱却にとって足かせになるのかはまだ誰にも分からない。このことも、小泉政権にとっては生きるか死ぬかの重大事である。


6月の国会の会期末に、与野党の対立が激しくなり、小泉首相が衆議院を解散して、総選挙を行う可能性もないとはいえない。ただ小泉人気にかげりが出ているので、そのような行動は取れないであろうという人もいる。また、抜け目のない小泉首相が、解散というカードを切るかもしれないという説もある。


私としては、小泉氏の運命は9月の自民党総裁選までは決まらないと考えている。野党の足並みが乱れているので、多くの自民党の政治家は、自民党の総裁が総理になることは確実と見ている。


それでは誰が小泉氏に対抗するのであろうか。以前に、麻生太郎、高村正彦、平沼赳夫、古賀誠という4氏の名前が上がったことがあるが、すでに消えてしまったようにみえる。現在は、堀内光男と亀井静香という2人の名前が浮上している。堀内氏は自民党の総務会長であり、亀井氏は自分だけが政府を引っ張っていける政治家だと主張している。しかし、この両者ともそれほど大きなインパクトを与える候補者のようには思えない。石原慎太郎東京都知事が総裁候補になるのではないかという淡い期待を抱く向きもあるが、その可能性はほとんど無く、勝てるチャンスはない。


それでは代わりの人物が誰もいないという理由で、人気が急落している小泉氏を自民党総裁と総理に再選していいのであろうか。もしそうなったとしたら、日本は国際社会の中で、三流ないし四流の国とみなされることに甘んじなければならないであろう。

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