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イラク戦後の世界へのメッセージ

公文俊平 (国際大学GLOCOM所長)


オリジナルの英文:
"Our Message to the World After the War in Iraq"
http://www.glocom.org/opinions/essays/200303_kumon_our/


要 旨


9月11日のテロの直後に書いた「GLOCOMからの緊急メッセージ」 (www.glocom.org/opinions/essays/200109_kumon_urgent/)、及びそれから1年目に書いたメッセージ (www.glocom.org/opinions/essays/200209_kumon_one_year/) の中で、私は友人や専門家のネットワークを通じて意見を交換し、皆で努力してテロと戦い、世界にテロを生み出す貧困や圧政といった根本問題を解決する方法を探そうと呼びかけた。私達はその方向で全力を尽くしたが、残念ながらイラクに対する戦争が始まってしまった。私達は、武力を行使することなく根本的な問題を解決する努力が実を結ばなかったことについて、自分達の力の無さを責める以外にない。


今回の戦争はいかに早期に終結したとしても、それが人々の間に深刻な溝を残すことは間違いない。すでに、西側諸国の間に亀裂が入ってしまい、また多くの国で政府の立場と国民世論の間に差が生じてしまった。米英とアラブ世界の間の溝が深まったことは言うまでもない。これは私達一人一人が、テロや根本的な問題の根絶にどう貢献できるかについて、より積極的に意見や情報を交換することによって、さまざまな立場の人々の意見の相違を乗り越えるように知恵を絞る決意を新たにすべきことを意味する。具体的に、イラクと中東の戦後復興について、この地域に対する政治的・経済的利権のためではなく、純粋に専門的および人道的な立場から議論を行うグローバルなオンライン会議の開催を提唱したい。そのような活動を積極的に行うことによって、特定の国のためではなく、テロや貧困や不正や圧制から自由であるべき人道的な立場から、新しい世界秩序を構築することを助けるために知恵を絞ることが可能となるであろう。


私達は現在、「智のゲーム」ともいうべき活動で競争し、影響力を行使するような社会に住んでいる。このような社会こそ「情報社会」と呼ぶべきであり、近代化の最終過程とみなせるが、現在の状況は、国家的な軍事力が衰退し、経済力が成熟し、智力が出現することがダブっている局面であるとも言える。このような局面では、情報社会の形成に貢献するために、私達の知恵を支配的な力とするようベストを尽くし、人道的な価値をグローバルなコミュニティの中で遵守し回復するように努力すべきであろう。そのような社会が到来することを祈り、このような戦争が再び起こる必要がなくなることを希望するものである。

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