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「特区で規制改革の社会実験急げ」

福井秀夫(政策研究大学院大学教授)


オリジナルの英文:
"Facilitating a Social Experiment on Regulatory Reform"
http://www.glocom.org/opinions/essays/200211_fukui_facilitating/


要 旨


特定の地域において、法規制のうち民間活動の制約となる規制を解除し、その経済社会への影響をモニターすることによって、全国への規制改革の波及を図るための社会実験を行おうとするのが「規制改革特区」構想である。法規制を合理化できない疑いが強いにもかかわらず、健康、環境などへの危害が規制の理由とされている場合、その妥当性を検証することなく、いったん定められた法規制は永続しがちである。


規制改革特区では、政策的ニーズがある場合に、弊害を最小限にとどめつつ、全国拡張のための社会実験を行うことができる。先例として今年制定された都市再生特別措置法があるが、法的論拠は基本的に地区内で建築に関する外部不経済が完結していることと土地利用が地域事情によって異なることである。


米国では、連邦憲法が広く州の立法権と自治を認めている。州法が連邦法に抵触しない限り、市民生活の根幹的事項に関しても州法で異なる規律ができる。これに対して日本では独自の条例制定権の範囲は狭い。ただし、日本においても国法によるのであれば、平等原則、経済的自由権、精神的自由権などの諸人権規定に抵触しない限り、地域ごとに規制の扱いを異にすることは憲法の許容するところである。


具体的に農業、医療、教育などの分野で、規制改革特区を早急に実現すれば、日本の国際競争力の確保、経済社会の構造改革、市民に対する多様な選択肢の付与のためにも大きなプラスになる。


その場合の方向性としては、第1に特区を地方自治体・民間主導で設定すべきで、規制改革自体の果実に主眼を置くべきであること。第2に、通達や運用にとどまらず、法律事項の特例を中核にして特区を考えるべきで、実施は憲法問題ではなく政策問題であり、立法府に裁量があること。第3に、特区の対象となる法規制は極力幅広に列挙し、地方自治体・民間の申請により国が認定する仕組みにすべきであること。第4に、特区は一定期間実施後の第三者評価を経て、できるだけ全国に改革を波及させることを原則とすべきであること。以上の方向で、規制改革特区導入が、全国での規制改革一般を促進することが期待される。

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