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さらなる改革が必要な日本経済

牛尾治朗 (ウシオ電機会長、経済財政諮問会議民間議員)


オリジナルの英文:
"Reform Must Continue in Japan"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20030922_ushio_reform/


要 旨


規制緩和と民営化の推進

日本経済は成長のダイナミズムを回復することができるのであろうか。日本経済の今後についてまだ悲観論を唱える者もいるが、私は近い将来いよいよ経済活性化の本番が来るという明るい見通しを持っている。日本経済は、これから数年のうちに次の成長の新局面に入る可能性が高い。


それでは日本の経済活性化を推進する力は何であろうか。明らかに、改革によって新たな座標軸、価値観が人々の経済社会活動を活発化することが成長の力となる。つまり、日本が官から民へ、国から地方へという民間主導型社会に変わることが求められているのであり、それが成長を推進することになろう。


この点で、景気を浮揚させるものとして規制撤廃がある。私の見解では、規制撤廃の計画は、60%くらいまで進んできた。これをできるだけ早く80%程度にまで引き上げることが望ましい。それが経済の構造変化を促し、行政サービスを含めたより効率的な経済のサービス化を進めることになる。


小泉改革については、道路公団や郵政3事業の民営化が経済再生のためには必要である。私の意見では、小泉改革は6割の計画は進んできているが、実現したのは2割くらいである。成功例としては、昨年10月に竹中平蔵金融・経済財政担当相が、不良債権処理について決断し、けりをつけた。その後、りそな銀行への公的資金投入で株式市場も底打ちした。全体としての改革の実現率を2割から6〜7割に引き上げられれば日本経済の浮上は早いであろう。


小さな政府の骨格を

より具体的に、2004年から2005年の期間に、国から地方へ権限の多くを委譲し、また特殊法人の多くを民営化し、市場からソフトに退出させる。こうして小さな政府の骨格を作り、日本経済の再生を促進する。


この点で、経済財政諮問会議の政策提案機能は十分である。しかし、諮問会議の政策提案や方針に基づいて関係各省が横割りで協力して政策を執行できるような仕組みがいる。


そのような小さな政府の骨格と政策執行の仕組みが確立すれば、国の財政悪化と日本社会の高齢化という深刻な問題を解決する準備が整う。私としては、そのような骨格ができた後に消費税率を引き上げて、国の借金返済と高齢化に対する策のために使うべきであると考える。


歴史的な改革の位置付け

そもそも今の日本の繁栄の大半を占めているのは、中曽根内閣時代の国鉄、電電公社、専売公社を民営化してJR、NTT、JTにしたことの効果であろう。国鉄は当時、今の不良債権問題と同様に、経済発展の重しになっていたが、6分割の民営化で少なくとも3つのJR会社は大変収益を上げるように体質が変わった。情報通信産業の分野ではNTTが民営化されたが、分割されなかった為、直ぐには効果が出なかった。しかしながら、現在では自由化の効果で、携帯情報技術やサービスで世界の最先端を走るようになっている。


かつて日本は「鉄のトライアングル」というシステムを作り上げて、一国繁栄主義を謳歌した。しかし、東西冷戦がバブル崩壊と同時期に終わり、経済のグローバル化が進み、一国主義のアプローチが認められない世界に変わった。当初、景気対策か構造改革かの議論が続いたが、「改革なくして成長なし」を掲げる小泉内閣のもとでコンセンサスが生まれ、今日に至っている。


この上はさらに改革を進め、日本をよりグローバルな経済にしていけば、中曽根内閣時代に匹敵する効果を上げることができるであろう。今は改革への動きをそのような歴史的な視点から評価することが必要なのである。

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