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所得格差の固定化避ける対策を

樋口美雄 (慶應義塾大学教授)


オリジナルの英文:
"Policies Needed to Avoid Immobilization of Income Levels"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20030930_higuchi_policies/


要 旨


日本では従来、「所得格差」という用語は、単に所得水準が異なるという意味を超え、所得を得る人に対する「不公平な格付けの差」という意味合いで受け取られてきた。しかし最近になって、ようやく公の場でも、この平等主義が日本の活力を失わせているのではないかと指摘されるようになった。1999年に経済戦略会議が打ち出した「日本経済再生への戦略」は「過度に結果の平等を重視する日本型の社会システムを変革し、『健全で創造的な競争社会』に再構築する必要がある」と主張する。


ある国の所得分配の動向を検証するには、一時点でみて人々の所得がどれだけ異なっているかということと、個々人の所得がどのように変化して来たかの二つの尺度が必要である。家計研究所が93年から毎年実施している調査をもとに分析すると、近年、所得格差の拡大と、階層の固定化傾向が見られることが判明した。


例えば、ある年の人々の所得について、低いほうから5段階に区分したデータを分析すると、最低所得階層からから翌年に上の階層に移動した人は、93−94年には36.5%であったのが、2000−2001年になると28%に低下している。また、ある年に最も所得の高い階層に居た人が翌年もそこに留まる割合は、93−94年に69.8%であったものが、2000−2001年には83.2%に上昇している。この傾向は転職しても変わらず、最低所得階層の転職者のうち、翌年上位に移動した人の割合は20%に過ぎず、下から二番目の階層の転職者のうち50%は最低階層に落ちてしまった。一方、最高階層の転職者の90%は翌年も同じ階層に留まっている。


かつて、日本企業は新卒者を教育することによって競争力を高めたが、これからは個々人が自らの能力開発に責任を持たなければならない。一方、個人のやる気を引き出すには、社内外において挑戦する機会の拡大が必要である。この一環として、社会人教育や再雇用環境の整備を行い、個人の再挑戦を支援する必要もあろう。


90年代後半から見られるようになった、所得格差の拡大・固定化の兆しが、長引く不況による景気循環的現象なのか、あるいは産業や技術構造が変わり、高度な知識を要する仕事と、特段の技術なしでこなせる仕事に二極分化したことによる恒常的な現象であるのかは、はっきりしない。しかし、高齢化社会が自ずから活力を失いやすくなることを考えれば、人々のやる気を引き出すために、これまで以上に機会の拡大と均等化に力点を置いた施策が必要となる。

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