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銀行さえしっかりすればいいのか

池尾和人 (慶應義塾大学教授)


オリジナルの英文:
"Is Revitalizing the Banks Enough?"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20031006_ikeo_is/


要 旨


「戦略の誤りは戦術では取り戻せない」という格言があるが、こうした観点からは、最近多い「銀行の収益性の向上を図るべき」との論調には問題がある。日本の銀行経営に問題があり、是正が図られるべきであることは当然であるが、それで日本の金融問題が解決するわけではない。


日本の金融問題の根本は、金融システムの基本的なあり方が時代遅れになっている点にあると認識する必要がある。キャッチアップ型の経済発展段階にあり、資金不足が基調の経済構造においては、銀行中心の金融システムは有効であったが、経済の成熟が進み、資金余剰が基調となった現状では、新たな金融システムが必要である。


金融システムの構造が変化すべき方向は、先に「金融審議会」答申で示されたように、市場型間接金融のチャネルの確立と伝統的な間接金融チャネルのスリム化による複合型システムである。したがって、全ての銀行に収益改善を求めるという現政策は、伝統的な間接金融チャネルをスリム化するという方向性に反している。


銀行業の規模を全体として維持しながら、多くの銀行の収益力を回復させようというのは、産業レベルの問題を無視しており、戦略の誤りを戦術で挽回しようという話でしかない。むしろいくつかの銀行には廃業してもらい、それによって解放された人材等の資源を、新たな市場型チャネルの構築に振り向けるべきである。

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