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反テロの「世界戦争」と東アジア情勢

田中明彦 (東京大学教授)


オリジナルの英文:
"Global War Against Terror and East Asia"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20040126_tanaka_global/


要 旨


9.11以降の世界の特徴とその東アジア情勢との関係について述べてみたい。単純化を恐れずに言えば、現在の状況は「世界戦争」の段階にある。9.11以後、ブッシュ政権はテロに対する戦争を宣言した。これは従来の国家間の戦争ではなく、世界的規模の戦争といえる。なぜなら米国を始めとする国際社会と、アルカイダなどのテロリスト・ネットワークとの間の敵対関係が世界中に広がっているからである。


戦争との類推で言えば、この世界戦争には3つの戦線がある。第1は国を超えたトランスナショナルな戦線である。なぜならグローバルなテロリストのネットワークには国境が無いからである。この戦いは色々な形で現れており、例えば警察や諜報活動とテロリストの反諜報活動の間の戦いや、フィリピン、イギリスやその他の国で最近見られたような、折にふれたテロ活動といった形がある。


第2の戦線はアフガニスタンである。ここは米国がアルカイダに戦争を宣言にした時にオサマ・ビンラデンの本部があった所である。米国はタリバンに対する戦争には勝利し、カルザイ政権のもとで憲法を制定することには成功したが、それでも新しい政府が支配している国土はわずかであり、反テロ戦争は依然としてこの戦線で戦われている。


第3の戦線はもちろんイラクである。なぜ米国がイラクに戦争をしかけたかについてはまだ十分明らかになっていないが、一つの見方としてはブッシュ政権がテロリストとの陣地の取り合いとして重要な拠点であるイラクを先に取ったという解釈が成り立つ。ところが特にネオコンにとって誤算ないし失望であったのは、戦争に勝ったのはいいが、その後の安定化が容易でないことである。むしろ最初の意図とは逆に、米国による戦争の結果、かえってイラクがテロとの主戦場になってしまった。


以上のような9.11以降の世界の特徴を踏まえて東アジアの現状を見ると、ある意味では、東アジアは反テロ戦争が「世界戦争」であるという主張に矛盾するような状況にある。なぜなら「世界戦争」にしては、あまり東アジアにその影響が及んでいないからである。その意味では現在の反テロ戦争は、東アジアに対しては第2次世界大戦よりも第1次世界大戦の状況に近いと言えるかもしれない。


1年前に多くの人達は、イラクの後は北朝鮮ではないかと恐れていた。しかし今日、朝鮮半島で戦争が起こる可能性はほとんど無い。東アジアのホットスポットと言われる台湾海峡も比較的落ち着いており、このところ戦争の兆候は見られない。


これはなぜであろうか。私の見方では、これはまさに米国による反テロ戦争のせいである。なぜならイラクが反テロの主戦場になったので、米国としては東アジアにもう一つ戦線を作る余裕がなくなったからである。そのために米国は北朝鮮や台湾やその他のアジアのホットスポットがもう一つの戦線にならないよう、対立ではなく封じ込めを行なっているからと言える。

(抄訳:宮尾尊弘)

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